震災の惨状を詠む

墨田区役所発行『関東大震災体験記録集』1977年

浦辺政雄 69才   (被災地 本所区長岡町)

 

浦辺さん
浦辺さん

〇 我が記憶衰へぬまに震災の証言を歌にと夜更け書き次ぐ

〇 日も鼻も唇咽喉も乾き果て火のなき道に脱れ出でにき

〇 焼水死幾千漂ふ墨田川茫然として佇ちつくし居き

〇 理由なく殺されていく人々を我が瞳の前に50余人見つ

 

ああいうことは繰り返しちゃいかん

 

浦辺さんには1984年に初めて話を聞いて以来、現地調査をお願いしたり、追悼式に列席していただいた。被服廠跡や小名木川ぞいに見た証言や思いを残して下さった。

 

当会編『風よ 鳳仙花の歌をはこべ』に、多くの証言を掲載させて頂きましたが、その一部を紹介します。

 

「墨田区が関東大震災体験記を募集して、短歌を出した事があります。そうしたら、朝鮮人虐殺にかかわる歌はすべて載らなかった(下の3首)。だけど、ああいう非常事態が今後起きないとも限らない。そのときに、ああいうことは二度と繰り返しちゃならないと、自分が生きてるかぎり、皆さんに真実を訴えたいと思って、でしゃばるようですがね、話すんです」

 

○ 抗はぬ朝鮮人に打ち落ろす鳶口の血に夕日照りにき

〇 虐殺を逃れし幾千の朝鮮人護送さるるを我が見送りし

○ 朝鮮人社会主義者を震災の非常事態に殺せしは誰か